Dream Catcherインプレッション
【これ一本でヒザから頭オーバーのチューブまでカバーできるという、ちょっぴり浮力多めな傑作”ダブルエンダー”ボード】
Robert Weinerは、その人柄とシェイプ技術からカリフォルニアで多大なる尊敬を集める人気シェイパーです。その彼を一躍有名にしたのは、あの有名なWhite Diamondです。 Whit Diamondは、アベレージなコンデションで多くのサーファーの度肝を抜いた傑作サーフボードでした。
そのボードが開発された当時は、多くの一般サーファーは尖っていて、細いパフォーマンスボードに乗っていました。だけど、乗り手の技量を多く必要とするそのようなデザインでは、苦戦しているサーファーも多かったのです。
そんな苦悩しているサーファーを開眼させたのが、White Diamondでした。
それ以来、カリフォルニアのマスターシェイパーのRobertは、数多くのハイブリットパフォーマンスボードデザインを開発していきました。このDream Catcherも、そんなハイブリットパフォーマンスボードの一つです。最大の特徴は、とても乗りやすい事。そして、アベレージな波のサイズから、オーバーヘッドまで1本で幅広く対応するという点です。
もも〜腰から、頭オーバーのチューブ波まで・・・まるで非現実なようなフレーズですが、そんなコンデションの中で多くのテストを重ねたボードデザインです。それでは、このボードについて乗り味なども含めて詳細も書いていきましょう。
【ボードの良い点】
Dream Catcherには、オンショアのトロい波から、台風波に発達した低気圧からの波、海の流れが強い場所、小波のクリーンウエーブまで多くのテストをしました。そんな中で、最大の特徴は
"波を取る能力が素晴らしい“
ということです。どんな状況でも、安定した力強いパドリングを実現させてくれます。カレントが強い場所や、混雑している場所であっても、自分のポジションを整えるためのパドルがとにかく楽、これは、ポイントノーズでは味わえない利点です。
パドルが強いので、自分が思ったようなポジションにボードを持っていけます。そして、パドルの強さ+ロッカー+幅ひろのノーズにより、とにかくテイクオフが早くて、スムーズ。きちっとしたポジションでなくても、強引に波に乗ることが何回も出来ました。
“ちょっと乗れ無そうだな?“
と思える波でも乗れてしまうのです。
その次の美点は、ボードのデザインで
"ノーズは広く、テールは絞込みをしている“
という戦略的なシェイプをしているので、
“アベレージな小波から、頭半のボムまで幅広く対応出来る”
という、幅広い対応能力を生み出すボードとなっていることでしょう。
ロッカーは標準ですが、ノーズフリップが効いているので、レイトテイクオフでもボードが刺さりません。大きめの波に乗った後でも、幅広すぎないセンターの幅&絞りが利いたテールのラウンドテールがかなり有効で、パワーのある波でのテールコントロール性が秀逸です。
アベレージな波では、ロッカーがそれほど強くなく、そして広めのノーズ幅・ちょい広いテール幅は広め+ちょっぴりとボリュームを増したレールの形なので力強く走っていきます。
ということで、このボードはまさにサーファーの夢ボードと言えるでしょう。
【スパイスアップ!】
夢ボードであることは間違いありませんし、ボードのバランスは特級です。ただし、どんなボードデザインでも利点と欠点があるように、乗り手がボードを購入する前に考えるべきことがあります。
@アベレージサイズでは、先の細いハイパフォーマンスのほうが動きのクイックさは上です。
A波が巨大になると、セミガンボードのほうが活躍します。
B小波でもドライブが効きます。だけど、グロベラー系のMush MachineやMutantには、小波や弱い波で勝手に走っていく能力はかないません。
以上のことは頭に入れておく必要がありそうです。
【どんなサーファーにこのボードは向いているか?】
@今までよりも波に多く乗るためにパドル力をアップして、鈍重&レトロな動きのボードは欲しくない方
A超浮力ボードよりも、チョッピリ浮力アップボードに乗りたい方
B幅広ボードであっても、きっちりとターンの質は出したい方
C今までのポイントノーズよりも多くの波に乗りたい方
となります。
さて、今回から少しインプレが変わりましたが、Day1だけここでインプレもしてみました。
【Day1】
場所:Oceanside、Tyson Street
波のサイズ:もも〜腰
風:弱いオンショア
Dream Catcherの最初のテストは、ボードを直接ファクトリーから受け取った後のカリフォルニアでした。 テストをカリフォルニアで行うことが多いのは、理由があります。日本のアベレージのビーチブレイクと、栗田がテストを行うカリフォルニアのサーフブレイクは、日本の波質にとてもよく似ています。
よく、外国産のボードは日本の波質に合わないという主張をする方がいます。数多くのサーフボードシェイプを海外や日本国内でテストをした結果、その主張は現在のサーフボードには当てはまらないことがわかりました。
特にカリフォルニアの波は、他の土地に比べて斜面が緩い波が多く、ここで開発されたボードは本当に日本の波にあうのです。
テスト初日は、スーパーと言えるハイタイドでした。水が多く、波は波長の短いウインドスエルです。週末だけど、とても空いている海です。2人しかサーフィンしていません。カリフォルニアの基準からだと、かなり波は悪い部類に入ります。たぶん乗れるけど、乗っても楽しくない。そんなふうに皆が感じる波のコンデションです。
朝一は他のサーフボードでサーフィンしました。その1ラウンド後に、この場所をチェックしたらそれなりにサーフが出来そうでした、だから、このDream Catcherをテストすることにしました。
波チェックしてい時は風が悪くなかったのですが、ホテルに戻ってウエットスーツを取ってきて同じ場所を見たら、すでにオンショアになっていました。海面はまだ大丈夫そうですが、少し荒れていました。
筆者は初おろしのボードは、いいコンデションでサーフしたいのですが、今日はいいコンデションではありません。ただし、ワックスも塗ってしまったし、このボードで新しい発見もあるかもしれないということで、あまり良くない今日のコンデションでテストをすることにしました。
まずはパドルの感触を確かめます。パドルはとても楽です。浮力は5'7"-19"-2 5/16"のサイズで、27.8くらいです。
浮力のイメージは、その実際のCL数値よりももう少しあるように感じます。ボードの中心部から感じられる浮力はありますが、パドルした時のフィーリングがとても軽いです。だから、ボードの動きも良さそうです。パドルのフィーリングは、乗り味に結構直結しますので、このパドル感は期待が出来そうです。
アウトに出ると、コンデションがイマイチなので誰も近くにはいませんでした。波はトップのみが崩れるダラダラ系です。だらだら・トロトロとインサイドへ向かって崩れていきます。ただし、すべての波がダンパーというわけではないので、いい波をピックすれば1アクションくらいは出来そうです。
まず最初に乗った波は、レギュラーでした。はっきり言って力の無い波・・・テイクオフ出来るかな??と思っていたけど、テイクオフ出来ました。素晴らしいほどの、波取り・波キャッチ能力です。ノーズの広さと、ボリューム、そしてそのロッカーラインのコンビネーションの賜物でしょう。
波に乗った後、ショルダーはあるような無いような感じのトロイ波でした。でも、軽くボードをプッシュしてあげると、ボードがグイグイと走ります。とにかく止まらないのです。レトロフィッシュのように、ずーっと走っていく感じではなく、ショートボードのフィーリングで乗っていけます。テールの動きも軽快です。
そして、インサイドで波が崩れるところで当て込みをしてフィニッシュしました。その当て込みも、ボードのレングスが抑えてあるので鋭く出来ます。RNF系とはまた違った当て込みのスピードの速さです。ぜんぜんもっさりと当て込む感じではありません。より、ショートボードのフィーリングです。
1本目で、すぐにボードはいいデザインをしているとわかりました。ボードが走ってくその走破性・そしてターンを決められる性能のコンビネーションがとてもハイレベルで融合されています。波が良かったら、もっと感動していたでしょう。いや、ある意味このオンショアの1〜2Feetの波で、これほどテイクオフと走り出しが早くて、躍動感のある動きも出せるのであればもう感動ものです。
グーフィーの波も乗ってみました。テイクオフが早いから、余裕を持って波を見ることが出来ます。余裕があるから、ライドにもゆとりが得られて、レールワークを意識しながらサーフィンが出来るのです。この波では2ターン出来ました。ジャンク系の波だけど、明らかにボードの良さがこの波でも楽しませてくれているのがわかります。
ターンはレールのボリュームがキープされているので、小手先ターンに頼らないのもとても嬉しいです。強引に板を振り回すのでは無く、ボトムの水の流れを感じながらボードをターンさせるという意識をつけられます。
テールがきっちりと絞り込まれているので、幅広ボードのようなターンの仕方というよりは、ターンの時はテールに加重をして、テール全体を使いながらターンを意識すると良いと思いました。
今日は波がイマイチだったのですが、このボードは波が大きくなっても使える感じの乗り味でした。機会があるかはわかりませんが、CAの滞在中にもっと質の高い・大き目の波に乗れたらな〜とも考えています。
【Day2】
場所:Ventura
波のサイズ:肩〜頭 セット頭半
風:弱いオフショア
前回CAの滞在中に、
もっと大き目な波に乗れたらな??
と思っていたら、すぐにそんな機会に遭遇しました。このサーフボードのシェイパーさんのRobertと待ち合わせをして、Venturaにあるシークレットスポットへ。波は長くて掘れているグーフィーと、クイックなレギュラーブレイクがあります。
パーキングで待ち合わせをしていると、Robertが来ました。そんな中、その他のサーファーも着替えをしていましたが、かなりの数のサーファーがRobertシェイプを持っていました。ある男性サーファーは、
このWhite Diamond2に乗ってから、俺のサーフィンが再生したよ。もうあなたのシェイプの虜だ?次のお勧めボードはナンダイ?
とRobertに聞いていました。Robertは、すぐに彼のお勧めをこと細かに教えていました。
弊社とRobertは、常に情報を直接やり取りしていますが、彼の細かさと職人肌のその気質にはいつも頭が下がります。自分がほぼ毎日サーフィンするシェイパーなので、サーファーがリアルに求めるものがわかるのでしょう。
そして、海で常に交わされるコミュニケーション。ファクトリーからたった5分~10分で味わえる、バラエティーに富んだVenturaの波。ビーチから、ポイントブレイク、そしてビックなスラブまで何でもあるのです。彼の毎日の日課を見ていれば、いいボードが出来ないわけがありません。
隣のカップルは、女の子がかなり使い古したRobertsのボードを持っていました。
"私このボード愛しているのよ“
とRobertに言う彼女。
そんなサーフ前のコミュニケーションをして、RobertはチームライダーのEithan osborne
に
"ここが今日のベストスポットだ。海にいるから、海で会おう“
と電話をしていました。そして、Hydro FlexのRich社長とシェイパーのBufoも加わって、皆でサーフタイムです。
沖に出ると、波がかなり大きめです。そして水量が多く、波が厚いのです。テイクオフポジションを誤ると、いい波に乗れません。Robertは
"YUKI!ここだここ!“
とポジションを教えてくれました。
ボードは5'7"と短いのですが、とにかくパドルがグイグイと進むので、水量が多い今日でもポジションニングがいつものポイントノーズよりかなり余裕です。テイクオフも、もちろん細いショートよりも早くなります。そして波に乗ると、そのプルイン(絞った)テールのおかげで、ボードスピードが速くなっても、安定したコントロール性を誇ります。きっちりとターンもこなせますので、横に行ってユラユラとアップスをするようなボードではありません。
細めのショートと唯一違うのは、トップターンをした際に、若干ノーズ幅があるな?と感じることでしょうか?と言っても、波に乗れる乗れないという基準で考えれば、筆者はこちらのDream Catcherのほうが断然気に入りました。
ピークが一番テイクオフしやすいのですが、ポジションが少しずれてもそれでもテイクオフが出来ます。幅広いノーズのおかげなんでしょう。インサイドの小さめの波から、爆弾セットにも乗りましたが、かなりいい感触でした。
後から入ってきた14歳のEithan osborne君は、ラインナップの中で一番いいサーフィンしていましたが、彼は若くて、ボードを自分でプッシュしてスピードを出せるのでDream Catcherのようなボードは必要なさそうです。
ただし、ボードの力を借りて、そのボードに助けてもらう必要があるもう40になる筆者はこのボードデザインはかなりアドバンテージになりました。
RichとBufoと筆者は、同時に上がりましたが、Robertはその後1時間半くらいサーフしていたそうです。後から
"Hey!, Biggest Grom in the water!(海で一番大きなグロムだなあ!)”
と言ったら、なんだか嬉しそうにしていたRobertの顔が忘れられません。
その後日本へ帰国して、多くの状況・波のサイズでこのボードに乗ってみました。イメージとフィーリングは、カリフォルニアでテストしたものと全く同じで
”1つしかボードを持たない・そしてちょい楽で乗るショートボードならこれ!‘
と感じました。すべてのサーファーにお勧め出来ますが、とくにサーフィンが好きだけど、細すぎるサーフボードではちょっと疲れてしまう+でも動きも十分確保したいという方が良いでしょう。