早い走り出しと、軽いノーズエリア。ミニボードなのに、パフォーマンスボードのフィーリングを残す、グットシェイプボード。
MADサーフボードで、コンパクトな波や、力の無い波で最大の動きの良さを誇るMAD Rocket Fish。今回はこのボードのインプレを紹介しよう。

このボード、俺にとっては今まで無かった新感覚のマジックボード。
特に,
この小さめのコンデションではこのボード重い・・もっといいボード無いかな?
パワーの無い波や膝〜肩くらいの波で、まるで小型ターボエンジンが付いたようなサーフボードが欲しい
なんて感じていて、新しいボード探している人にはピッタリ。
この手のタイプの形状のボードらしくなく、シングルコンケーブでテールの食いつきも良いので、ボトムターンでタメもできるし、トップではルースなので、まさに小波マスターマシーンだ。
このボードの開発のきっかけとなったのは、カリフォルニアはオーシャンサイドやカールスバットで、日本に良く似ているビーチブレイクの弱めのコンデションや小さめの波で、MADサーフボードのライダーが、スピードと動きの良さを両立したボードで、小気味良く楽しむためにシェイパーのMartyにリクエストしたこと。

もちろんMADサーフボードでは、そういったコンデションでも対応できるRNF形のボードもあるのだが、ライダー達はノーズのボリュームが気にいなかったらしく、もっとノーズの軽いボードをリクエストしてきたのだ。
ノーズを細めにして、特にトップアクションの軽さを引き出しながらも、テイクオフが早くて、スピード溢れるボード・・・そんな矛盾するような難しい課題を、マスターシェイパーであるMartyは時間をかけてデザイン&シェイプに成功した。
そうしてできたのが、このMRFだ。
Martyの家にこのボードを取りにいったのは、ちょうど日本へビジネスの用事があって一時帰国する前日。彼の家に行って、ボードを触る前にMRFを見た時(この時は、そのMRFが俺のボードだとは知らなかった)、
“俺あそこにあるサーフボードが欲しいな”
と思わず言ってしまった。
Martyは笑いながら
“うん、あれは君のボードだよ”
と言ってくれた。早速、そのボードを触ってみると、とても軽くできていて、しかもサイズは
5’3”×19 3/8×2 3/16
だったので、ちょっと短いかもな?と思った。

ちなみにサイズはすべて Martyのお任せ。いつも使っているパフォーマンスボードのサイズ(5'11”〜6'0”×18? 1/4×2 1/8〜1/4くらい)と、体重・身長を伝えて、すべてはお任せ。
そしたら、5'3"のサイズが出てきたというわけだ。
サイズスペックだけ見ると、小さく感じるのだが、ボリュームも十分あり、なおかつ今まで乗ったことの無いようなタイプのボードだったので、期待が膨らむのが分かる。
ボードのアウトラインは、RNFより細め。特にRNFのような丸いノーズではなく、しっかりとしたポイントノーズであるのが特徴。だけど、さすがに短いので、通常のパフォーマンスボードよりはノーズエリアとテールエリアは広めにしてある。
デッキはフラット気味で、全体的にボリュームがあるけど、レールはちょっとだけ絶妙に落としている。なんだろう、80年台にあったダウンレールみたいではないのだけど、最近のモダンデザインボードにある、フラット気味で、レールだけ丸いけどちょこっと落としてあるみたいな感じ。
ボードのロッカーは、エントリーは弱め。これは小波用ボードの定石。だけど、テールロッカーも弱くすると、早いけど動かないボードになるから、テールにはキックで多少ロッカーを強めにしている。コンケーブはフルシングルコンケーブだ。
シングルコンケーブは、うまいシェイパーじゃないと、簡単に入れられない。というのは、シングルコンケーブはスピードが高いけど、動きは直線的になるから。スピードを高めながら、そして動きも出すシングルコンケーブの入れ方は、そのロッカーとレールの形状、そして全体のアウトラインにかかわってくる。
さあ、小さなボードだけど、アイデアがいっぱい詰まったようなこのMRFはどうだろう?期待も膨らむ。早速試してみたいところだったけど、すでに明日には日本行きのフライトに乗らなきゃならないし、そして、旅支度のパッキングもまだ終わっていない。
それじゃ、日本で初乗りだ!
と決定して、パッキングをしてボードを日本へ持っていくことにした。

さてさて、ついにこのボードの初乗りとなった。場所は千葉北のあるビーチブレイク。人も少ない場所で、波は膝〜モモ。
最初に波を見たとき
“うーん、波が重なっているし、あまり良くない・・・やめて帰っちゃおうか?”
と思ったんだけど、せっかく新しいボードもあるし、たまに1アクションくらいできそうだから、パドルの感覚をつかもうくらいの気軽な感じで入水決定。
早速ウエットスーツに着替えて、ボードにベースコートとトップコートを塗る。新品のボードにワックスを塗るのはいつも、ワクワク感があって好きだ。
なんにんか集まっているピークに目をつけて、早速パドルでアウトへ。アウトといってもショアブレイク気味の波なので、15mのパドルすればすぐにアウトだった。
最初にパドルした感想は
“これ浮力ぴったりかも!“
これが、まず感じた印象。ノーズが軽く、そしてパドルも早いという印象も受ける。
そしてパドルをして、ピークで波を待つ。今日のコンデションは、どっちかというとレギュラーのほうがショルダー(本当に小さいですが)があって、グフィー側は短め。でも中にはグフィーでもボードが走っている人がいるので、どっちのサイドでも楽しめるそう。
サイズは膝〜ももと小さいながらも、たまにはいるセットは走れる!そう考えながら、波を待つ。
そうしたら、俺が乗れそうなレギュラー方向に割れる波が入ってきた。しかも隣には誰もいないので、確実に波にも乗れそうだ。
パドルを力強くして、コンパクトな波にテイクオフを試みる。ボードがすーっとスムーズに走り出した。
ここでこのボードでまず驚いたことが一つ。このボード、5’3”と短いけど、今日のコンデションに限って言えば、6'0”の先の尖ったパフォーマンスボードよりもテイクオフが早い。これは間違いない。
皆さん経験したことありませんか?小さい波で、通常のオールラウンドボードを使っていて、テイクオフが限りなく遅いのを。
波に乗ろうとして、パドルを前回にするのだけど、波に乗れず(いわばボードが走らず)、波に遅れてしまうというあの現象だ。
はっきりいって、小波でテイクオフでストレスを感じるサーフボードは、自分の技量にあっていないか、サーフボードのデザインが波にマッチしていないといっても過言でない。そんな苦痛を多く経験してきた俺だから、とても良くわかる。
最近は頭が良くなった?のか、波にあわないボードはあまり使わないようにしている。小波の時は小波用のサーフボードデザイン。頭サイズには、頭サイズ付近用のボードデザインを使う。
やっぱり、技術不足はサーフボードに補ってもらわないと損だ。最近のボードって、デザインや素材がとても進歩していて、かなりサーファーの技量を補ってくれる。ありがたいことだ。
そして、このボードスムーズだけでなく、一瞬テイクオフの走り出しが早い。これはとっても重要なことで、走り出しが遅いと、波においていかれるし、せっかくテイクオフしても、ボトムにドボーンと落ちてしまってホワイトウオーターにつかまるのが常だが、走り出しが早いと、ボードをトップ側にとどめたまま、そして横にボードを向けて斜めでもテイクオフ可能。
この差は大きい。
ボードが走り出して、スタンドアップ。波を見ると、とても小さいのだけど、ショルダーがあって走る場所がある。
ボードをちょこっと踏み込んで、アップスをする。ボードが小気味良く走る。ドンドンボードが走っていく。
このボード、本当にRocketエンジンが付いたように止まらない・・・
 
スピードが高いから、フラット気味の場所もグイグイと走る続ける。スピード性能が高いのだ。
でもスピード性能が高いだけでは、コントロール性が失われるケースが多いのだが、このMRFは違う。スピードが高いけど、その短さと、ボードのロッカーとコンケーブのバランスの良さのせいだろうか?動かしやすいのだ。つまり、非常に動きが軽い。
このスピードと動きの軽さは、いままでに無かった感触。
そう強く感じながら、どんどんと走っていく。そして、インサイドでローラーコースターでフィニッシュ。
“いいボードだな〜“
と感じながら、またピークに戻って行く。その後に、2本同じようなレギュラーの波に乗ったが、最初も含め3本とも同じような印象。
スピード+操作性の軽さ
がこのボードの特徴のようだ。通常の大きめのレトロフィッシュのような鈍重さは皆無だ。

そうこうしていたら、グーフィー側に乗れる波が入ってきた。早速パドルをして、テイクオフ。いつもながらのスムーズな走りで、ボードを走らせる。ちょっとグーフィー側の波はフラットで、少しパンピングをしながら走らせる感じ。でもインサイドではちょっと掘れてきて、最後に当て込みができる。
俺がグーフィーの波で、一番ボードを判断する際に気を使っているのは
ボトムターンでの失速の無さ
と
トップターンでの返しの軽
の2つ。この2つの1つだけではダメで、2つとも組み合わせで性能が高くなければならない。というのは、ボトムターンでの伸び(つまりスピードをキープする能力)が無いと、いくらトップターンで返しが軽くても、波においていかれてしまうし、ボトムターンで伸びがあっても、トップターンで返しが重いと、波のトップにボードが残ってしまって、これまた波においていかれてしまうためだ。
MRFは?

皆さん、このボードには、小波でのコンパクトな機動性能を期待して欲しい。
ボードは、こんな小さな波でもスピードのロスが無く、そしてボトムでタメが効く。そして、トップでは、返しのキレがあり、鋭いアクションが可能。
もうこの時点で、ボードはマジックボード決定だった。
結局このレフトの波では、ボトムターンとトップターンの2アクションのみだったけど、ボードの性能も十分わかり、レギュラーでもグフィーでも、半径の小さなタイトなターンも可能ということが判明。
その後、2時間くらい、多くの波に乗って大満足。今日のコンデションだけだと、分からないから、次の日のサイドオンショアの膝〜ももの同じサイズのコンデションでも乗ってみた。面はそれほど荒れていないけど、最初のテスト日よりは状況的に好ましくない。
でも、感じたことは全く前日と一緒。スピードが高くて、そしてコントロール性抜群。
ボトムでは、ためができて、トップではとてもテールがルースかつ、軽快。しかもトップアクションでスピードのロスが無い・・・
“やばい、こんな良いボード乗ったこと無い”

と再度感じながら、顔は自然とニコニコしてしまう。
新しいマジックボードの誕生だ。
この時点で頭サイズの波には乗っていないので、そのサイズでのインプレは後日するとして、小波であれば最高のボード。
●スラスターとはまた違った感じを生む、クワッドフィンでのMRF
MRFは5フィンマルチボックスを装備(オプション仕上げで6,800円増し:本体価格)が可能。最初のMRFは3フィン仕上げでオーダーしたのだが、次の2本目は5フィンボックスでオーダーをした。
そのボードで、3フィンと4フィンの時の感触を比べてみたので、そちらを書いてみよう。
3フィンでの感触は、どっちかというと、トップ&ボトムでしっかりとしたターンをしながらサーフィンする感じだ。センターフィンが梶となっていて、よりボトムでためやすい。
4フィンはというと、特に走り出してからの横へのスピードが速くて、そして動きが機敏になる。3フィンより、横への動きが強調されるようなフィーリング。縦への動きができないような、フェイスの浅い、トロ早い波だったら4フィンのほうが気に入る人が多いだろう。
4フィンオンリーだと、3フィンのカチッとした乗り味が恋しくなるので、是非MRFで4フィンも味わいたい人は、5フィンマルチボックスにして欲しい。それだけ、価値のあるオプションと言えるだろう。
MRF。今まで発見できなかったサーフボードの特徴と、その性能を味あわせてくれる。
シェイパーのMartyはオーストラリア人だけど、ボードのフィーリングはカリフォルニアタッチだと思った。カリフォルニアシェイプらしく、スローな弱い波でも、キビキビと動くボード。そんなフィーリングを持ち合わせるシェイプだ。
これからもその他のMartyシェイプを試すのが楽しみでしょうがない。それほど、期待に答えてくれたMRFの乗り味だった。
私が乗った中でもとても好印象だったボードのMRFだが、様々なコンデションで乗っていると、そのボードには不向きな波・得意な波があることも分かってきた。そのタイプをまとめてみよう。
【得意な波】
- 小さくだらだらな波で、通常のショートだと長すぎて波にボードがフィットしない時
- コンパクトで早い波。
- 通常のショートでは全く楽しめない小波
- 波は早くてもとろくても軽快な動きが楽しめる
【不得意な波】
- 水量の多い大き目の波
- 波が大きくフェイスが広いタイプの波
原則として、MRFは小波、そして膝〜肩くらいのサイズで一番の本領を発揮する。そういったコンデションで、ボードを使ってもらえばそのボードのポテンシャルの高さを必ず味わってもらえるだろう。

小型WRCカーのような、キビキビとしたステアリングのような軽く、そしてタイトな操作感。テイクオフの早さと、その後の走り出しの良さ。まさに、日本の小波系の波にピッタリのボードを、新感覚で楽しめる。今までミニ系ボードに乗った事の無い、そして自分のミニ系ボードの動きが重い・・・なんて感じていたら、是非試して欲しい。
XTR素材とのマッチングもベストなので、そのボードの価値を体感してもらえること間違いない。XTRサーフボードジャパンお勧めの一本だ。

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