
Alternative Medicine
(XTRは)新たなる薬だHow XTR May Cure Epoxy Technology's Progressive Woe's
XTR(テクノロジー)が、どうやってエポキシ特有の困難を乗り越えているのか?
Surfing Magazine, January 2004 |
"ちょっと来てみな、俺がどうやってXTRボードをテストしているか見せてあげるよ." まだ若いエポキシプロのオーナー(ファクトリーはカリフォルニアのオーシャンサイドに)であるJavier Huarcaya - Pro(ハビアー)が、南カリフォルニアのぎらぎらした太陽が照りつける中に駐車してあった彼の車に私達を誘い出した。
車のトランクには彼がハンドシェイプした、Pulse XTRサーフボードが2本入れてあるという。トランクを開けると、その灼熱の太陽に照らされていた車内の熱が私達の肌に"もわっ"吹きつく。
その熱い空気で、トランクの中はすでに摂氏38℃を軽く超えているような感じだった。その2つのボードのデッキ側を上にして、どろどろにとけて生クリームのようになったワックスを親指で拭うと、"見てくれ"とボードの中心を指したのだ。そこを見ると10個もの小さなワックスの泡が、まるでキノコが生えたようにのように盛り上がっている。ハビアーはにこりと笑った。"これこそが剥離を防ぐ発明なんだ"と私は悟った。
エポキシ樹脂を使用したサーフボードは、近年とりたて新しい技術ではない。エポキシ樹脂を古くから使っていた使ったサーフボードビルダーであるハビアーこそ、その事実は一番分かっていることであろう。しかしハビアーの作るXTRサーフボードは、エポキシボードの欠点を限りなく無くすことに成功している点で革新的な進歩なのだ。
ファクトリーの中に入ると、世界の超一流シェイパーのサーフボードがごろごろとしている。アルメリック・ラスティー・メイヘムなどのボードに、XTRのロゴを入れたエポキシプログラッシングのサーフボードが、今か今かと使われる日を待っている。XTRフォームは高密度フォームであり、そのフォームはClosed Cell(水を吸わないフォーム)として知られている。
そのフォームの一般的な用途としては、その高性能から飛行機の翼などに使用されたりする。他のエポキシ樹脂タイプのサーフボードでは、現在ほとんどEPS(ビーズタイプのOpen Cell:水を吸いまくる)で出来ていて、このEPSは通常魚屋さんなどで見かける発砲スチロール性のクーラーや、容器などに使用される材質とほぼ同じである。
エポキシプロは、今日まで19年もの間エポキシ樹脂を研究・開発しているんだ(2009年段階)。でもこのエポキシ樹脂を使ったサーフボードの最大の問題が剥離なんだよ。エポキシ樹脂は熱に非常に敏感なんだ"とハビアーが言った。熱に敏感なエポキシ樹脂の特性。
それに加えて、サーファーによってボードのデッキ面が足によって継続的に踏み続けられると、踏みつけられた場所のフォームがその分凹んでくる。そして凹んだ場所から押し出されたフォームの中に入っていた空気が、いわばガスとなって逃げ場を失い、その結果フォームと樹脂の間にたまって、フォームと樹脂の膜を切り離そうとする。
EPSフォームはHigh Density(高密度)といくら密度を高めても、結局は単純なビーズ構造のために間がすかすかしている。そのために空気の逃げ道が無限にある。しかしXTRフォームは高密度なゆえ、空気の逃げ道が限られている。特に踏みつけられて凹むデッキ面から出た空気の行き場がなくなってしまうのだ。

"俺達がXTRフォームを使い始めた時から、水を吸わない性質は分かっていたよ。だからどうにかこの優れた性質を生かそうと、常日頃から考えてきたんだ"とハビアーが付け足した。
苦難の日々が続いたそうだが、2000年にハビアーは、ついにXTRフォームの欠点を解消する発明である特許申請中のThermoventテクノロジー"を開発。このテクノロジーはデッキ面とボトム、そしてレールに小さい穴を開けて空気を効率的に逃がしてあげる技術だ。エポキシ樹脂でラミネートしたサーフボードの欠点・そして利点について分かっている人・ボードビルダーにとっては、このThermoventテクノロジーは大きな革新なのはお分かりだろう。ビーズ構造のEPSフォームにはまったく無い、水を吸わない優れたXTRフォームを最大に生かせることが出来たのだから。
この発明によって多くの賞賛・名声を受けたハビアーは、ギャレットマクナメラへサーフボードをシェイプ。そのクイバーは、50フィートのジョーズの波を攻めるための6'1"-16
1/2サイズのXTR製のトーインサーフボードをサーフボードだった。世界的に有名なシェイパーであるデックブリューワーと共同で作り上げたそのサーフボードに感銘した私は、"うわーすごいね"と私が笑いながら言い、"そうだろ"とハビアーもはみかみながら返答した。だけどこういった生死をかけるビックウエーブの真剣勝負の場所では、笑い事でないことぐらい我々も十分承知だった。
ビックウエーブでのコンデションでも性能が出せるという証明に加え、彼のところに世界中からつぎつぎに寄せられるライダー・シェイパー・お客様からのフィードバックから考えると、XTRの可能性は無限大ということがわかる。
"XTRボードは壊れないボードじゃないんだよ。だけど、通常のPU(ポリエスター) ボードより軽く、しかも丈夫に仕上げることが出来るるんだ"とあの世界でも有名なアルメリックが言う。
さらにはアルメリックは、"このXTRボードのフレックスパターンは、ほんの少しだけPU(ポリエステル)ボードとは違うんだ。だけど近いものがある。XTRボードは素晴らしく品質が安定しているし、ターンをする際に波のフェイスに、うまく吸い付くような性質があるんだ"とXTR素材について語っている。
他のClosed Cellフォームの支持者である、パタゴニアサーフボード(Ventura:ポイントブランクス)は、またこういったClosed
Cellフォームの特質に満足しているメーカーの一つだ。
"私達のアプローチはXTRという素材で軽量かつ、究極のボードを生み出しているハビアーとはちょっと違うけど・・・"とポイントブランクスのシェイパーであるフレッチャーが言う。"私達は軽量なボードを作ることにも重点をもちろんおいているのだけど、それよりも耐久性を第一に考えている。こういったボードは最終の完成形にするのにとても手間がかかるんだ。というのはサーフボードをシェイプする前のブランクスから作っているのだから。
一般のシェイパーは、ブランクスは他の会社任せだろ?でも我々(XTRのエポキシプロも含め)は、違うんだよ。その手間がかかることを差し引いても、素材の魅力はある。最小の重量の追加で、強度を増すの樹脂を多めにボードに与えることが出来るんだ。こういったボードでは、もっとアグレッシブに波を攻めることができるよ。"

しかもXTRの凄いところは、このXTR素材はリサイクルが出来て環境に優しく、シェイプがしやすいということだ。もちろんエポキシ樹脂を使ったラミネーションをする際は、温度などの管理に神経を使う。だけど"このXTRサーフボードは今でどうしてもやりたくてやりたくても俺が出来なかったことを実現させてくれるボードだ。今俺の(サーフィン)レベルは恐ろしいほど高い。"というギャレットマクナメラプロの言葉を聞いたハビアーと、そのファクトリーのクルー達はこういった難しい管理の障害などは気にならないようだ。
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